祖母とその娘が北海道から東京にきたのである。
祖母(以下:ババア)は御年80歳である。
そんなババアが、飛行機という鉄の塊の乗って、はるばる関東にきたのである。
上記の通り、ババアは御年80歳である。
ババアである。
やはり、歩く速度は遅い。
分速、約40メートルである。
1分間に40メートルであるからして、100メートルを歩くのに、約2分。
すなわち、ババアとってすれば、1キロは絶望的な数字である。
耳も遠い。
遠いまではいかないが、やや遠い。
必然的に、声もややでかい。
以上のように僕の祖母は、歴としたババア。
右から見てもババア。左から見てもババア。
正真正銘、誰がなんと言おうともババアなのである。
しかしだ。
ババアはよく食べる。
皆で中華街に行ったのだが、尋常じゃない食べっぷりに驚愕した。
耳の遠いよく食べるババア。
一見、相反する2つが両立しているババアである。
そして、向上心がある。
ローマ字があまり読めないのに、パソコンを習いに行っている。
恐らくそれは、僕が北京大学の理学部に入学することに相当する。
パソコンの練習のため、戦時中の暗号を含んだようなメール、例えば、
「トラトラトラ、ニイタカヤマノボレ」
といったような、ほぼ解読不能なメールが定期的に届く。
どんなメッセージがこめられているか、はなはだ疑問である。
以上がババアの生態である。
そんなババアが関東に来たときの話である(前置き長いなぁ…)。
僕も転職が決まり、有給消化中であったため、3人で伊豆へ行ってきた。
美味いものを食べ、何度も温泉に浸かり、実に幸せな時間であった。
そんな時間も終わりを迎え、静岡から東京に戻るために熱海駅で電車を待っていた。
平日の朝だったため、熱海駅には電車を待つ人々が相当数いた。
1つの乗車口に、近くに20名はいたであろうか。
そんな中、僕と母とババアの立ち位置はちょうど三角形。
僕と母親が、本日のプランについて打ち合わせをしていた。
ババアは耳があまり聞こえない。
したがって、僕らのすべてのやり取りには参加できない。
口をあんぐりあけたような様子で、僕の顔を見つめている。
僕、身長175センチ。ババア150センチ。
僕を見上げる状態で、僕の顔をあんぐり見つめているのである。
するとだ。
ババアが大きな声で僕に向かって言うのである。
ババア:「はなくそ!」
えっ?
声がでかいが、思いがけない単語。
僕と母は耳を疑った。
しかし、僕の方を見て、確かに、
「はなくそ」
と言った。
ババア、いよいよボケる時がきたか。
あるいは、昭和20年代のギャグか。
僕は失笑しながら、クールに言った。
僕:「おいおい、ばあちゃん。なんだって?」
ババア:「やっちゃん!!はなくそ出てる!!!」
………。
ぎゃーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!
声がでかすぎる!!!
ババアは耳が遠いせいか、周りに発表するか如くのボリューム。
恥ずかしい。
とっても恥ずかしい。
男子といえども恥ずかしいのである。
僕がモジモジしていると。
母:「何もそんな大きな声で言わなくても…」
ババア:「だって、出ているのだもの!人に見られたら可哀想でしょう!!」
ババアに告ぐ。
パソコン学ぶより、違うこと学べ。