亀田のとーちゃんがボクシング界から去ったように、僕もタバコ会から会見もせずに去ったのである。
かれこれ、4ヶ月ぐらい経ったであろうか。一人でいる時や、タバコを吸わない人とお酒を飲む時は、全くタバコを吸いたいと思わない。
しかしだ、喫煙者とお酒を飲んだ時が大変なのである。
その吸いたい衝動と言ったら筆舌し難い。
興毅君が大毅君に
「ヒジでもいいから目に入れろ!!!」
言ったように、僕の心の中のセコンドが、
「意地でもいいから口に入れろ!」
とタバコをくわえるように指示するのだ。
しかしだ。
僕は大毅君とは違い、成人した男子である。
「とーちゃん、それはあかん!それは反則や!とーちゃん、セコンド失格や!」
とスポーツマンシップにのっとり、心の中のセコンドをクビにし、禁煙タイトルマッチを防衛し続けているのである。
前置き終わり(前置きが長いなぁ)。
禁煙タイトルマッチに防衛し続けているのには、方法がある。
以前、どこかで、
『タバコを吸うことが習慣化しているのがダメ』
という内容の情報を見たことがあった。
仕事をしながら、朝起きてから、食後の一服。そういった習慣がいけないとのことなのだ。
そこで天才の僕は考えたのである。
代替物があればいいのだ、と。
その代替物として選んだのは2つ。
1つめの物は、ミンティアである。
刺激がよい。それはちょうど、メンソールのタバコを吸った時の刺激に近似している。
したがって、刺激を欲した時にはミンティアを口に放り込むのである。
これはかなり効果的だったように思う。
2つめの物である。
それはガム…、ふふふっ、違うのである。ガムではないのである。
それは、
スルメ。
逆から読んだらメルス。
そもそも僕はスルメが大好きである。
できれば日常的に、気軽にタバコを吸うようにスルメを食したいと思っていたのだ。
友達との談笑中にスルメ。
仕事の休憩中にスルメ。
スルメスルメスルメ!!!!
寸暇を惜しんで、スルメスルメスルメ!!!
僕の夢は、
『スルメでいっぱいのプールを泳いでみたい』
なのである。
昔、とんねるずの番組に、番組中にひたすらイカを食べ続けているイカおやじなる人物が出ていたが、我こそ現代のスルメおやじなのである。
そんなスルメおやじの僕は、禁煙対策にスルメをもちいたのである。
しかもだ。ところかまわず。
家だろうが、出勤途中だろうが、街中だろうが、ところかまわず食べるのである。
しかし、やっかいな問題も発生する。
それはスルメという存在自体ゆえの問題なのだ。
考えても頂きたい。
街中でスルメをむしって歩いている20代を見てどう思うかである。
僕がいかにスルメ好きでも恥ずかしいのである。
そこで僕は考えたのである。
あらかじめ、むしったスルメを胸ポケットに入れておくのである。
そして、市民の目を盗んでは口に放り込むのである。
「右よし!左よし!パクッ」
そして、僕は悦に入るのである。
「ふふふ。愚かな市民よ、このムシャムシャはガムではない!スルメなのだ!極上の味!」
「右よし!左よし!パクッ」
そして、
「愚かな市民よ。僕が食べているのはロッテ発売のガムではない。ぼく発売のスルメ味のガムなのだ。」
悦に入るのである。
「右よし!左よし!パクッ」
時として、
「左よし!右よし!パクッ」
時として、
「前よし!後ろよし!パクッ」
時として、
「ターン!360℃よし!パクッ」
時として、
「上よし、地面よし!パクッ」
時として、
「ネコよし!電柱よし!パクッ」
時として、
「僕の社会の窓よし!鏡にて鼻毛よし!パクッ」
しまいには、よくわからないところまで確認してスルメを食べるのである。
しかし、そのスルメの時代には終わりがくるのである。
始まりがあれば、終わりがあるのである。
街中で買い物していた時である。一緒にいた女性に言われたのである。
「たまらなく、あなたはスルメ臭い」
物語は終了したのである…。
長い旅路の終わりなのである。
ラララ、スルメ♪
ラララ、忘れない♪
僕は今、ミンティアだけで生きている。
スルメよ、僕は元気だ。