先日、友人宅に行ったときに、束になっている年賀状を見つけた。
その束になっている年賀状を見て、あることを思い出した。今日はそのことについて書こうと思っている。
僕は基本的に年賀状を書かない。小5まではマメに書いていたのだが、小6に年賀状で愛の告白をするというアクロバティックな年賀状を書いて以来、なんとなく萎えてしまったのだ。僕の年賀状人生はそこで燃え尽きてしまったのである。
小6のラブレター年賀状については、書こうと書かまいか迷っていた。本題でもないし、恥ずかしい思い出なのだ。しかし、この際だから書いてみよう。
僕には、当時想いをよせていたTさんという人がいた。小学生の恋愛なので、今思えばお遊びな想いであった。しかし、当時の僕としては真剣だったのだ。
「この想い、どうやって伝えてやろうか」
と日々悩んでいた。悩んで末に、
「年賀状は手紙みたいなもんだ。この機会に伝えてやればいいのだ」
とアクロバティックな僕は思ったのだ。
さっそく僕は年賀状と睨めっこしながら悩んだ。
『あけましておめでとうございます。今年も好きです。よろしくお願いします』
『あめましておめでとうございます。今年は蛇どしですね。ヘビのようにTさんにまとわりつきたいと思います』
『あめましておめでとうございます。今年はジャングルジムで愛について語らいましょう』
なんてなことを散々悩んだ挙句、結局、直接的とはあまりにかけ離れた愛の告白を綴ってしまった。
『あめましておめでとうございます。突然ですが、僕の好きな人について書こうと思います。背は小さくて、優しくて、イニシャルはTです。今年もよろしくお願いします』
ぎゃー!!!かっこわるー!!!
今思い出すだけでも恥ずかしい!!恥ずかしすぎる!!なんで年賀状にこんなことを書いてるんだ!しかも、すっごい間接的な言い方!!
あぁ、どなたか過去を消せる消しゴムを売ってくれませんか?あぁ〜、恥ずかしい。
閑話休題。
そんな出来事がトラウマになったのかは定かではないが、それ以来、めっきり年賀状は書かなくなった。
それから数年の後、中3の出来事である。
僕には初めてお付き合いをしたGさんという人がいた。ちょうど同時期に初恋人ができた友人のO君から、
「よぉ、Uよ(僕の本名)。今年、我々には初めて恋人ができたというわけだ。お互い恋人に年賀状を出してみないか?」
と提案された。トラウマが消えていた僕には特に断る理由もなく、恋人に年賀状を書くことに相成った。
一緒に近所の文房具やに行き、年賀状を買う。帰ってきてから彼は勉強机で、僕はガラスのテーブルで年賀状を書き始めた。
僕は過去に辛い思い出があるので、ごく普通に、本当にごく普通に年賀状を書いた。僕はさっさと書き終わってしまったので、O君の書いている年賀状を後ろから覗き込んだ。
「おい!見んなよー!」
と一蹴された。それから1時間ぐらい彼は書いていただろうか。彼が書いていた内容は不明のまま、一緒にポストにポストーンした。
僕は彼女からも年賀状が来て、ホクホクのまま新学期を向かえた。
新学期を向かえ、僕は久しぶりに会うクラスメイツたちとおちゃらけていた。新学期の1日目が終わり帰ろうとした時だっただろうか、O君の彼女のTさんに呼び出された。
彼女の顔を見ると、神妙な面持ちである。
「ねぇ、U。私、泣きそうだよ」
と神妙な面持ちのTさんは言う。
「どうしたのだ?」
と僕は質問する。
「こんな年賀状、もらったんだよね…」
と言われ、年賀状を差し出された。O君からの年賀状である。ドリドリなんてなことを言いながら文章を読んでみる。
『あめましておめでとう。僕のメス犬になって下さい。わん!!』
どーん!!!!
衝撃である。新年早々、メス犬である。しかも、丁寧に挿絵まである。犬はTさん、手綱を持っているのはO君の挿絵である。犬に扮したTさんの吹き出しにはしっかり
『わん!』
と書いてあるではないか。
「私、どうしていいかわからないよぉ…」
と泣きっ面で嘆願されたのである。
僕はなにも言うことが出来ず、数分間の時が流れた後に、
「ま、まぁ〜、本気ではあるまい」
と心もとない返事をして、その場は解散となった。
数日後に、O君が振られたのはいうまでもない話である。