ハクション。人はクシャミをする。鼻に綿棒を突っ込めばハクション。コショウを振りかけられればハクション。噂をされればハクション。噂をされただけでハクションするぐらいなのだから、ハクションもなかなか大変である。
驚く方もいらっしゃるとは思うが、僕もハクションをする。
「えっ、美麗なポールさんもハクションするのですか?」
と問うたあなた。そう、僕もハクションをするのである。
はい、前置き長い。閑話休題。
今日、図書館で勉強していた時のことであった。僕はハクションをした。テッシュで鼻水を拭いながら、
「誰だ、僕の噂をしているのは〜。マチコちゃんかな?それとも、ユイちゃんかな?んもぉー、僕のことばっかり考えないでよねぇ、うふふっ」
なんてなことを心の中で呟いていた。そんなことを呟きながら、僕はあることを思い出した。
「小さい時、ハクションとクシャミをしたら、一人で『大魔王ぉ〜♪』と一人で言ってたなぁ」
と。そう、いわずと知れたハクション大魔王の主題歌である。
『はぁ〜、はぁ〜、はぁ〜、はくしょ〜ん、だいまお〜♪』
で知れたハクション大魔王の主題歌である。
わからない人のために説明すると、ハクション大魔王が閉じ込められている魔法ツボの側でクシャミをすると、
『呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン』
とお決まりの台詞でハクション大魔王が登場する。そして、彼はクシャミをした人、すなわち、ご主人様に魔法を使って手助けをするである。しかし、ハクション大魔王はおとぼけな失敗をするキャラで、ご主人様に迷惑をかけてしまうのが大抵のパターンである。
なんとも微笑ましい漫画である。
いや、待てよ。本当に微笑ましい漫画であるのか。カミソリごとく切れるといわれている僕の頭脳で考えるのだ。一考の後、僕はある結論を得た。
そう、手助けをするハクション大魔王は、ハクション『王』ではなく、ハクション『大魔王』であるのだ。ハクション大魔王は、悪魔の中の『大』、しかも、大の悪魔の中の王様なのだ。
むむむ、恐ろしい。微笑ましい漫画から恐ろしい漫画に一変する。
主役のカンちゃんがいつもいじめてくるブルドッグをギャフンといわすためにハクション大魔王を呼び出す話がある。結局、ブルドッグの方が先にクシャミをして、カンちゃんがブルドッグに首輪をつけられて飼われてしまう。
「ごめんなさーい、カンちゃーん」
とハクション大魔王はいうのだが、そこんとこハクション大魔王は『大魔王』である。故意で陥れているに違いない。まさに、悪の所業。
勉強ができないカンちゃんが宿題をやってもらうためにハクション大魔王を呼び出す話がある。しかし、これまた結局のところ、ハクション大魔王が引っ張るに引っ張って宿題が全くできないで終わる。にも関わらず、好物のハンバーグだけを取ってツボの中に帰ってしまう。
まさに、悪の所業。
お金持ちのカンちゃんの友達がいる。お抱え運転手が彼を車で迎えにくる。それを羨ましく思ったカンちゃんはカッチョイイ車で迎えに来てとハクション大魔王に頼む話がある。しかし、結局のところ、ドラム缶に乗ってハクション大魔王は迎えに来る。カンちゃんの面目丸つぶれである。
まさに、悪の所業。
こうやって考えてみると、ただならぬ漫画である。
ちなみに、この日記は
『ハクション大魔王は「大魔王」ってことに気づいた。ショックで夜も眠れない』
と書こうとしただけなのに、こんなに長くなってしまった。ハクション大魔王、やはり、大魔王である。