今日の話は、バーバーの悲劇その3である。いや、今日『も』バーバーの話と言った方が正しいであろうか。
「てやんでー!バーバーネタでどれだけ引っ張るんでい!」
と突っ込みをいれた、そこの江戸っ子。いやね、引っ張っているわけではないのだよ。実際、そういうネタがあるから書くのだよ。わかって頂戴ッ!
さて、さっそくバーバーの悲劇その3について書いてみようと思う。
僕は横浜から札幌に帰ってきてからはというものの、床屋で髪を切るということをしていない。手先が器用で知られた友人のN君にいつも髪を切ってもらっているのだ。
N君は理容師・美容師の資格を持っているわけではないのだが、プロにも劣らない腕前を持っている。評判に評判を呼んで、彼の友人達に頼まれるぐらい達者な腕前なのだ。そんな彼にいつもお願いをして切ってもらっている。
しかし、彼は忙しい人。切って欲しいときに切ってもらえないのだ。そこで、達者な腕前のN君が達者だというぐらい達者な床屋さんを達者なN君に達者に紹介してもらった。
その達者な床屋さんで切ってもらったのは3週間ぐらい前だろうか。なるほど、確かに達者であった。今まで髪を切ってもらった中でも、最も達者な床屋さんであった。達者の中の達者。達者の王様である。僕は大変満足して家に帰った。
先日、僕は大好きなアーティストの一つのoasisのプロモーションビデオを見ていた。oasisのボーカルはなかなかの男前である。リアムギャラガーという人なのだが、その人は僕の憧れる男性の一人である。
その彼を見て思った。
「もうちょっと前髪が短ければ、僕はリアムギャラガーそのものではないか」
と。その誤解が見事に悲劇を引き寄せた。
その日はF氏と勉強をする予定であった。彼の家に向かう直前、前髪をすきバサミでチョキチョキと切ったのだ。これがなかなか上手くいった。満足した僕は、ブーブーでF氏の家に向かったのである。
彼の家に着き、インターホンを押してから、
「おっじゃましまーす!!どもー!!リアムギャラガーでーす!!」
と元気に言いながら彼の家に入った。
彼が居間のドアから玄関にのそっと出てきた。すると、どうだろう。彼は僕を見て固まったのだ。
「どうかしましたか?僕の顔にウンコでもついてますか?」
と僕は問うた。わざとらしい質問である。僕のニューヘアーを見て、かっこよさに言葉も出なかったのだろうと僕は想像した。彼は固まった表情で僕に言った。
「お、おまえ、髪切った?」
「おうよ!ふふっ、惚れたんだろう?どうだ!」
なんてなことを自慢げに言った。しかし、思わぬ反応が返ってきた。
「あははっはははは!!!おまえ、前髪短すぎだから!!めっちゃ変だから!!!」
そう。大爆笑されたのである。僕はわからなかった。今、現実に何が起こってるのか把握できない。
「えっ?えっ?マジ?変なの?マジ?えっ、マジ?えっえっえっ?マジ?マジ、えっ?」
と僕はひたすら「えっ?」と「マジ?」を繰り返した。
次第に僕は現状を把握していった。僕は前髪が短い。僕は変な髪形の男なのだ。しかし、いまいち現状を受け止められない僕がいた。昼休みの時に彼に問うてみた。
「お、おい、F氏よー、そんなに僕の髪型は変か?」
すると彼は、
「うーん、大丈夫だよ。もう見慣れたから!」
ぐぐぐぐににっ!!!見慣れたって!!やっぱり変なのだ!!!変だけど見慣れただけなのだ!!見慣れて笑わなくなっただけなのだ!
その日は塾があったのだが、たいそう塾の生徒にも笑われた。
「ちょっとー、前髪が短い先生!この問題わからないからちょっと来て!」
なんてなことを言われる始末。
しかし、塾のボスである母親に聞いてみると、そんなに変ではないという。
「どこが変なの?」
ともいう。ちょっとばかり安堵した。
しかし、翌日の朝、母親に改めて髪型について質問してみた。すると、一言。
「うーん、そういわれてみれば、確かにカッパみたいだね」
………。
カッパは川に帰ります。川できゅうりでも食べます。かっぱっぱー!!!